古文書を読んでみたいけど、いろんな用語が出てきて難しい~
わかります。古文書を読むにあたってくずし字を学習しようとすると、いろんな用語が出てきますよね。
なんとなく分かるような気もするんだけど、具体的には説明できないかも
そうそう。でも、そんなあやふやな気持ちのままでは学習もなかなかはかどりません。
まずは基礎的な知識を押さえておくと、独学をする際もスムーズですし、また講座やセミナーに参加する際にも焦らなくて済みます。
この記事では、くずし字初心者の方に向けて基本的な用語などをまとめてみました。
一度目を通していただくと、もやもやが少しスッキリするかもしれません。
ぜひチェックしてみてくださいね。
古文書を読む前に知っておきたい基礎知識
みみずが這ったようなんて言われるくずし字。
ただでさえ読めそうにないほど難しく思えるのに、「変体仮名ってなんだったっけ」とか、「句読点がなぜないの?マジ不便!」とか色々疑問が湧いて来ませんか?
独学しようとしている方は、まず最初にこういった部分でつまづくかもしれません。
また、これから講習会やセミナーへ参加しようと思っている方も、事前にある程度こういった知識をもっておくと、講師の先生のお話にもついていきやすくなるでしょう。
古文書とは何を指す?
古文書とは一体何でしょうか。
そもそも「文書」というのは、「特定の個人や機関が特定の相手に向けて作成した記録」のことを指します。AからBに宛てたもの。例えば手紙や契約書、通知書、訴状といったものですね。
「古文書」というのは、こういった「文書」の古いものです。
基本的には近世(江戸時代)までの「文書」が「古文書」ということになります。
また、日記や帳簿といったものは「記録」であって、古いものは「古記録」となります。
さらに、小説や随筆、和歌などは文学であり、「源氏物語」や「徒然草」、「小倉百人一首」、江戸時代の草双紙などは「古典文学」になります。
つまり、本来は、「古文書」、「古記録」、「古典文学」は別々のジャンルなのです。
とはいえ、一般的に「くずし字入門」などでに例として出される「古文書」は、文書も記録も文学分けず、また明治時代に書かれたくずし字の文章も含む場合があります。
なぜなら、くずし字を学習する際には近い年代のものや、身近な文章からトライしていく方が親しみやすいからですね。
ですので、当ブログでも、明治時代までの古記録も含めた広義の意味で「古文書」という言葉を使用しています。
ちなみに書かれているものが「紙」ではなく「木」や「石」であっても、条件を満たしていれば「古文書」となります
くずし字学習に最適な古文書の種類については、下記の記事でも詳しく紹介していますのであわせてご覧ください。
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古文書には句読点がない!
古文書を読むのが難しい、ということの理由に、くずし字字体に慣れていないということのほか、句読点がないから文章の区切りが分からず意味が取りにくい、ということがあります。
私たちが当たり前に使っている句読点「、」とか「。」ですが、くずし字を習い始めると、いかにこの記号が便利なものかがよく分かります(笑)
もっとも、句読点に関するものが全くないわけではありません。しかし句読点は必須ではなかったため、漢字と平仮名で多少変化をつけるなど、ある程度句読点の役割を持たせた書き方を行なったりしていました。
明治に入り、活版印刷が進むと句読点が表れはじめます。
明治39年(1906年)に出された、文部省大臣官房圖書課の「句読法案(句読点法案)」を標準として「句読点」が文章に必須のものとなっていくのです。
◆「句読法案(句読点法案)」は、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができます
変体仮名とは?
変体仮名とは何でしょうか。
実は、現在私たちが使っている仮名以外の字形(異体字)のことです。
現在私たちが使っている仮名は、一つの音に一つの字形。
ですが、これは明治33年に小学校で教える仮名の字形が統一されたからです。
それ以前までは統一されておらず、一つの音に複数の字形があったのでした。
現代でも、お蕎麦屋さん・天ぷら屋さんの看板や、箸袋の「おてもと」という文字などに、変体仮名が残っている場合がありますよね。ぜひチェックしてみてください。
くずし字を読む、ということは、こういった一つの音に複数の字形がある変体仮名を読んでいくことでもあります。
へ~~、昔は一つの音にいろんな字形があったんだね…
最初は戸惑うけれど、ちょっと慣れると前後の文脈から分かって来ることもあるからあまり心配しないでヨシ!
日本の仮名の歴史
もともと文字のなかった日本に、中国から漢字が朝鮮半島を経て日本に伝わったのが、三世紀以降といわれています。
その後、漢字の音を借りて日本語を表記するようになったのが五世紀ごろ、そしてこの仮名がほぼ完成したのが九世紀後半ごろとされます。
この仮名は和歌や「源氏物語」などの文学と共に発展し、行に高低をつけて散らすように文字を書く「散らし書き」の表現によって洗練されていきました。
やがて鎌倉時代頃になると、貴族だけでなく様々な階層の人々が文字を書くようになります。漢字仮名まじりの書き方は次第に定型化して、南北朝時代の尊円法親王の「青蓮院流(しょうれんいんりゅう)」という流派が誕生しました。
これが、江戸時代に広く書かれた「御家流(おいえりゅう)」の元とされています。
江戸時代に広まった「御家流」とは?
江戸時代に多く使われた書体が「御家流」と呼ばれるものでした。
実用的な書体であった「御家流」は、幕府が公用書体としたことで、高札や公文書にも使われます。
そして手習いに通う子供たちの教科書「往来物(おうらいもの)」にも「御家流」が使用されたため、庶民の間にも広まりました。
くずし字を読む際には、この寺子屋の教科書「往来物」が取り上げられる場合が多々あります。それは江戸時代の子供たちにも読みやすい書体であったからなんですね。
まずは、寺子屋の教科書からくずし字の学習をスタートしてみる、というのもありです。
そのほか押さえておきたい用語
【写本】=手書きで写された本や文章のこと。
【刊本】=主に近世に印刷によって刊行された書物。そのほか「版本」、「刻本(こくほん)」、「印本(いんぽん)」、「摺本(すりほん)」とも呼ばれます。
「金属活字」による印刷技術は、天正遣欧使節団が日本に持ち帰っています。その後20年ほどの間「キリシタン版」として布教のための印刷物が作られていました。また徳川家康は、「木活字」による本も出版させています。しかし、文字を続けて書くくずし字が主流だった日本では、一文字ずつの活字を作る活字印刷は広まらなかったようです。
江戸時代初期からは、一枚の木の板にくずし字をそのまま彫って摺る木版技術が隆盛し、中期から後期にかけて大量の印刷物が作られ庶民も日常的に楽しむようになりました。
【翻刻】=くずし字で書かれている古文書を、活字化して現代人が読めるようにすること。
【合字】=2文字以上の字を合わせて、1文字にすること。
【庵点】=箇条書きの文書の頭、和歌・連歌・謡物や、連署する姓名などの肩につける「〽」などの記号。
【踊り字】=同じ文字を繰り返す際の記号。「重ね字」、「送り字」などとも。
まとめ:まず基礎知識を頭にいれてくずし字を読んでいきましょう
以上、くずし字を学習するにあたって知っておきたい事前知識を紹介しました。
くずし字の読解は、文字を読むということだけでなく、印刷や文字の歴史についても知っておくと、より一層理解が深まることと思います。
当記事が、少しでもあなたのくずし字読解のお役に立てれば幸いです。
また、古文書・くずし字ビギナーの方に向けて「【超初心者向け】古文書読解のためのロードマップ」というまとめ記事も作成しています。こちらもあわせてご覧ください。
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それではまた次の記事でお会いしましょう!
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